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今朝は昨日よりあたたかい。長男氏が学校から持って帰って、ベランダで巨大化したヘチマも元気そうだ。本葉が生えたばかりの赤ちゃん苗を、ホームセンターで買ったきゅうり栽培セットに移し替え、雑に育てたらどんどん大きくなった。とにかく日当たりと水が必要で、干からびそうに暑い日でも給水30分後にはシャキッとしている。反応が良いのだ。打てば響くという言葉がヘチマにピッタリくる日が来ようとは。部分的に日当たりが悪い場所にあっても、茎がぐーんと伸びて、次の日には最高の場所に蕾を配置している。植物は動物に比べて動かないと思っていたが、犬っぽささえ感じる明るい生命力。すぐ芝犬ぐらいに成長し、今はもう全長3メートルはある。


去年亡くなった私の祖父は、実家の3面に畑を作りすべて一人で管理していた。広大な敷地をフルに使うので、収穫時期がくると大量の野菜が取れる。完全に家庭菜園の域を超えており、トマト、ナス、キュウリなどをどう消費するかが日々の課題だった。トマトソースや漬物を作るにしたって限界があるのである。そんな環境で大きくなったため、野菜に対するありがたみが人より薄い。ヘタを落とす時の切り方が雑、もっとギリギリを攻めろと夫に怒られる。


祖父は楽しかったんだと、ヘチマを育てて思った。毎日水をあげる、それだけで植物はこんなにも答えてくれる。人間関係のようにうまくいかないこともあるだろうけど、何も喋らない植物のサインが少しずつわかるようになると、嬉しいのだ。正しいことをしているという充実が体にみなぎり「今晩はよく寝れそう」という気分になる。祖父がスイカの赤ちゃんに摘果日(間引いた日)を書いた小さな看板を立てていたのをふと思い出した。名刺サイズくらいで、小さなスイカと並ぶととてもかわいい。あの看板から滲み出るよさは、これだったのだ。



朝起きて、パンを準備する。5gずつにされたバターをバターケースからとりだして、ちぎって冷凍パンに配置するのが日課である。毎回いい顔ができるので、うれしい。焼けたら、イチゴジャムを塗る。


今日は文学フリマ札幌がある。夫である辻さんが窓辺歌会の冊子と自分の日記(辻々の辻)を売りに行く。「この服でいいかな?」と無難なポロシャツを着ていたので、そういうときはこれだろと枡野浩一さんの短歌Tシャツを手渡す。前面に大きく

好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君

がプリントされている。自分用に買ったものなので首周りが少しパツパツ。


私は家に残り、長男次男氏と過ごす。これもひとつの文学フリマへの参加(貢献?)のような気分になる。雑に作ったスパゲッティを食べ、大きな公園までどんぐりを拾いに行く。母→亡くなった祖父→長男と3世代に引き継がれたiPhone7のGoogleマップが公園までの道を教えてくれる。長男氏の自転車にはスマホスタンド装備があるので、どこへでもいけるのだ。私は彼の背中をひたすら追いかければいい。次男と私が乗った自転車もまた電動アシスト付きだから、どこにだって行けるのである。


途中コンビニでぷっちょとジュースを補給。迷うことなく公園についた。遊具でひとしきり遊んで、近くの神社でおみくじを引く。次男氏(4歳)に「ここには神様がいるんだよ」と教えたら動きが慎重になった。彼なりの丁寧さで二礼二拍手一礼をしていた。いつも行くスーパーでは突然好きな方向に走り出し、近づく人々に話しかけまくる人間が、こんなにもゆっくり動いている。神社に漂う緊張を感じ取って表現できること、すごいと思った。


その後レッドオーク(アカガシワ)のどんぐりを拾いまくる。とにかく大きくて立派なのだ。しかもこの公園はレッドオークだらけなので価値が大暴落! そこらじゅうに転がりまくっている。拾っていると「どんぐりの目」になってきて、遠くからでもいいどんぐりがどこにあるか気づくようになる。次男氏にもどんぐりの目が備わってきて、巨大で美しい産毛が生えたやつを次々と袋に入れている。楽しい。これが無料で楽しめる公園って最高だ。


途中で長男氏がぷっちょを地面にばら撒き、銀紙につつまれたそれらも拾う。そして拾った側から食べていた。リスみたいだと思った。


パジャマを半袖から長袖に変えた。

本日、札幌の最高気温17度。最低気温10度。もう半袖は無理だ。体のほとんどを布で覆わないと、寒さの不快が体中を駆け回る。北海道の機密性の高い室内でも、そういう季節になってしまった。


私は長袖を半袖にする瞬間がとても好きだ。初夏、外出先でシャツの袖をまくって、手首を空気に触れさせる一瞬。冷たさと同時に訪れる圧倒的な開放感。そこから物語がはじまって、走り出すような勢いで夏がやってくる。


それなのに!!!

長袖に変わる瞬間は心が全然動かない。電気自動車が停車するように、すーんと静かに袖が長い服を選んで、着た。秋の入り口は静寂からはじまるのか。そんな気持ちでスーパーに行くと、ウールのコートを着たご婦人がいらっしゃり、秋っていうか冬じゃん! と楽しくなった。冬は好きなんだな、自分。


はやく雪が積もって、全部真っ白になってほしい。



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